クロの想い出 (5)
だんだん我が家の暮らしに慣れてきたクロは
1人での散歩を、楽しむようになってきた。
テラスを閉め忘れていた時もあるし、テラスの
隙間をくぐって脱出するときもあった。
最初のうちは家の周りをうろうろしている
だけだったが、徐々に大胆になってきて遠出
するようになってきた。何度目かの脱出騒ぎで
大捜索したにも拘わらず見つけることができず
翌日まで持ち越してしまう時があった。
翌日近所を訪ねまわり見かけなかったかと
尋ねると、「見た見た」といたるとこで証言が
でてきた。
ラリック美術館の案内係の方は
「昨日は何回も見たよ、捕まえようとしたけど
逃げ回って、駄目だった」
ラーメン屋のおじさんは
「今朝国道を渡ろうとしてバスにぶつかって
血だらけになって、山の方へ上がって行った」
最初は楽観的だった私もやばいぞと思い始めた。
必死に探しまわすと我が家に上がる道と
一つ筋違いの坂道の上の空き地に黒い物が
見えた。クロである。何事もなかったように
私に飛びついてきた。ケガもしていない。
これからは注意せねばと痛感したのだが、
喉ぼと過ぎればなんとやらで、これからも
何回も脱走騒ぎを引き起こすのである。
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